生活再建支援相談窓口あれこれ<第6回>
北大阪地域労福協
92.生活再建支援相談窓口あれこれ〔№6〕 (06.4.4)
- ある女性 ・ 藍子さんの多重債務からの生還
藍子(仮名)さん(21歳)が、N信販のクレジットカードを作った理由は、「ぴあカード」でコンサートなどのチケットを申し込む会員になるためでした。そして、当時付き合っていた泰男(仮名)から『そのカードのキャッシング枠はいくら?』10万円と藍子が答えると「月々2万円づつ返すから今すぐ10万円借りてほしい」と言われるままに要求に応じる。2ヶ月ほどは約束通り返却してくれていたが、3ヶ月目にはアルバイトを辞めていて、口では早く返却したいと言いながら毎日ぶらぶらと過ごしているだけ。一方、藍子さんも将来、医療事務の仕事をしたいとの希望があり、今の会社を辞める。そんな時、藍子さんから退職金とハローワークからの給付金が出るのを知ると、泰男より 彼自身と、家族にも借金がある事を聞かされる。藍子さん 『もうこれ以上 泰男に関わっていたら自分がダメになる』と思い、携帯電話の番号も変え、家族にも協力してもらい、電話も取り次がないようにしてもらい、泰男との連絡を断ち切りました。すると何日も何日も家の前に車をとめて待ち伏せしたり、どうして調べたのか藍子さんの友人に電話を掛け、バイト先を聞き出し、押しかけてきたり、最後には『俺の所へ戻らないなら家族、友達など周りの人間からつぶしていく』と言うような、脅迫内容の手紙が送られてきました。藍子さん本当に怖くなり、こんなにビクビクして暮らす位なら縒りを戻した方が楽だと思い、泰男の所に戻る。それからすぐ、借金の申し出を言われ、N社の専用カードを作る。 カードを作った理由は、泰男に渡す分は勿論ですが、藍子さんの家庭への生活費を入れる為でもあった。
藍子さんの家庭は5人家族で収入は、父親が25万円、藍子さんが5万円で合計30万円程度でした。当時は妹も、弟も学生でかなり生活は苦しい状態でした。藍子さんは、自分の分と、泰男の借金をも返済しており、ついにはカードの限度額もいっぱい迄使い切ってしまいました。もうこれで泰男もあきらめてくれるだろうと思っていたのに、更に別のサラ金より借りてほしいと言って来た。これには藍子さん相当な抵抗がありましたが、自分の返済が厳しい事もあり、T社から20万円借りる。その内の5万円は自分が使用、後の残金は全て泰男と彼の親の借金返済にあてられていた。この頃から泰男の両親からも借金の要求されるようになり、P社から20万円借り入れをする。それから数ヵ月後、連絡の無かった泰男より 『住み込みで働ける職場が見つかったので、引越しのお金を貸してほしい、必ず毎月返していくから』 と懇願される。当然返してくれないもの、逃げるつもりなのも判っていたが、離れていってくれるならと思い、A社から20万円借り入をする。その後はアルバイトを2ヶ所かけもち、やりくりしながら医療事務の資格もとり、Nクリニックへの就職も決まり月収10~11万円を貰えるようになり、何とか返済できるのではと思っていましたが、やはり苦しく、結局また T社から10万円借りてしまう。この時点で藍子さんの借り入れ金額は、信販1社、サラ金4社で債務総額は200万円に膨れ上がり、毎月の返済額は8万5千円で現状の収入ではとても返済できなくなっていた。
藍子さん悩みぬいた挙句、当事務所へ相談に来られたのは、このような状況の時でした。『今になって思うと、あの時、あの脅しに私がしっかりしていて耐えきれば、こんな事にはならなかったのに、悔しくてなりません。最初は10万円、20万円だった額をこんなにまで膨らませてしまった私が情けないです』 と反省しきりでした。藍子さんには、現在サラリーマンの隆司(仮名)さんという婚約者がおられ、今度こそ幸せを掴みたい、結婚することも決まっていていた。しかし、『こんな過去を抱えたまま、隆司さんとは結婚できない』 と、涙を流していました。
≪相談員よりのアドバイス≫
≪相談員よりのアドバイス≫
藍子さん自身しっかりとした意思をもつこと。今後安易にサラ金などにお金を借りようとしない事。基本的に自分の収入範囲で生活する事。(必ず家計簿をつける事)
辛いだろうが、隆司さんに過去の全てを打明け、お互い隠し事の無い形で二人の新しい生活を築いていく必要がある事。(過去を隠したままでは、また脅迫されないかと怯えながらの生活しなければならない)
現在の債務額を収入から考えて、自己破産はやむを得ないと思われる事
自己破産の申立を弁護士に依頼するには、費用として約35万円が必要である事、等 を説明する。
辛いだろうが、隆司さんに過去の全てを打明け、お互い隠し事の無い形で二人の新しい生活を築いていく必要がある事。(過去を隠したままでは、また脅迫されないかと怯えながらの生活しなければならない)
現在の債務額を収入から考えて、自己破産はやむを得ないと思われる事
自己破産の申立を弁護士に依頼するには、費用として約35万円が必要である事、等 を説明する。
その後の藍子さん、一週間後当事務所に再訪され、隆司さんに過去の事すべてを打明けたところ、彼からよく話してくれた、『君の過去を知ったうえで結婚したい、その上エンゲージリングを買ってあげようと思っていたお金があるから、これを破産申立費用に当てていいよと言ってくれました』と晴れやかな笑顔になっていました。
早速、弁護士を紹介し自己破産(同時廃止)の申立を依頼。その後免責の決定を受けることが出来ました。
早速、弁護士を紹介し自己破産(同時廃止)の申立を依頼。その後免責の決定を受けることが出来ました。
数ヶ月して、藍子さんお礼に見える 『先日、隆司さんと結婚しました。今までのことが嘘のようです。この幸せを絶対守っていきます』と話をされ、最初に来られた時とは別人のように若々しく、きれいになって見違えてしまうほどでした。
今回の紹介事例は、すこし特殊な事例のようには思えますが、ほんの少しつもりが、知らぬ間に多重債務に陥ること、また若者の間ではクレジットやローンの融資枠の貸し合いが、簡単に行われていること、安易な男女交際が多重債務の引き金になっていること、などを考えると、いまの若者の生活態度に対する一つの警鐘ではないかと思います。最近、新聞紙上でも、メル友を巡る犯罪が報道されていますが、その犯行が例外なくサラ金などによる多額な債務が原因になっていることも気になるところです。